2008/07/25

20080725 対岸の彼女 角田光代

20080725 対岸の彼女 角田光代

直木賞受賞作品。
良い。
面白かった。
最近読んだ本の中では最も良かった。
二人の中年女性の微妙な心の流れをうまく描出している。
高校時代のエピソードを織り交ぜた書き方が良い。
主人公の一人、葵の心の中が透けるように見えて多少悲しくもなりそうだった。
そうなのだ、自分が変われば自分の周りも変わってゆくのだ。
自分の周囲が変わってくれるのを待ってはいけない。期待してもいけない。
それではいつまで経っても何にも変わらない。
人は信じるに値するし、この世は生きるのに値する面白いものなのだ。

20080719 助手席にてグルグルダンスを踊って 伊藤たかみ


20080719 助手席にてグルグルダンスを踊って 伊藤たかみ

芥川賞作家伊藤たかみ氏の本2冊目。
こちらのほうが面白かった。
帯には審査員全員が感動したとか書かれていたが、それは嘘だろう。
村上龍の限りなく透明に近いブルーに比べればインパクトが全然薄い。
パンチがない。
沸き踊るような生命感もない。
多少、普通の高校生よりも恵まれた生活をして、恵まれた恋愛を幾つもこなしていることを連ねているだけだ。
うらやましいとも思わないし感動もしない。
一人、途中で死んでしまった友人の扱いが軽く、小説自体の重さを決定付けていると思う。
軽い本なのだ。
軽い男の軽い少年時代の本。

20080719 フランチェスカの瞳 五木寛之

20080719 フランチェスカの瞳 五木寛之

五木寛之の本を初めて読む。
この人の本は男女の間に渦巻く感情もろもろなのだろう。
たぶん、この本以外の本もそうなのだろう。
おじさん年代には願ってもない、若い女性とのアバンチュールを描いている。
こんなことが実際にあるのか、どこまで本当なのか。
会社で暇をかこっているおじさん族にはうらやましい本だろう。
教科書になりそうだ。
だけど、こんなにかっこいい仕事をしているおじさんもいないだろう。
イスタンブールの百万ドルの夜景は、一度見てみたいと思った。
アフリカ旅行の帰途で夜のバンコクの上空を飛んだが、女王の嘴と言われる見事な夜景だった。
素晴らしい光の集積に心を奪われた。
あんな夜景を見てみたいものだ。

20080719 八月の路上に捨てる 伊藤たかみ


20080719 八月の路上に捨てる 伊藤たかみ

芥川賞を受賞した本。
まさかこの薄い本に小説が2本入っているとは思わなかった。
この薄さで芥川賞とはまた恐れ入る。
読んでみて以外や、あまり面白くない。芥川賞っぽくない。
なんというか、愚痴、愚痴、愚痴、の連発でできている小説だ。
毎日が思い通りうまく運ばずどうしようもない流れに逆らうことすら許されない個人の非力さとでもいうものを描こうとしているのだろうか。
主人公は間違いをしているわけではない。
しかし幸福な人生を送っているとも言いがたい。
その二つは私に言わせれば関係は無い。
以上、感想終わり。

20080719 こらからは歩くのだ 角田光代

20080719 こらからは歩くのだ 角田光代

直木賞作家角田光代氏の本はこれで2冊目。この本はエッセイ集である。
よく飲み歩く人だ。人と一緒に飲んで愉快に過ごすことが好きなのであろう。
たぶん、友人が多いに違いない。飲兵衛の友人も多いに違いない。
面白い出来事にも事欠かない人だ。
書の題名にもなっているのは自転車にまつわるエピソードなのだが、読んでいて吹き出した。
笑ってしまった。
よくよく運のない人なのか、そういう星の下に生まれてしまった人なのか。
自転車には乗らないほうがいいでしょう。

20080719 夜をゆく飛行機 角田光代

20080719 夜をゆく飛行機 角田光代

直木賞作家角田光代の本を初めて読む。結構面白い。肩に力を入れずに楽に読める本。
高校生の私、の視線を通して描かれる家族の振舞い方が面白い。家族でも自分には心の中まで読める訳じゃない。
いろいろなハプニングを通じてリアリティのある生活風景を伺うことができる。
この中で何度も出てくる飛行機は、変わらない物の象徴である。主人公は出来事を通じて自分が変わってゆくのを実感してゆく。
その心情の機敏な変化が、女性らしい視点できめ細かく表現されている。
読んでなんとなく安心する本。