頭のよくなる家というのが本当かどうかは定かではないが、話題になっていることは確かである。本人の努力がもっとも重要な項目であることが欠落しているような気がするが・・・。以下引用。
生活ファミリー、モデルルーム見学急増、濃密さ生活ファミリー、モデルルーム見学急増、濃密さ求める、ブームの裏に親の不安、間取り2006/12/15 日本経済新聞 夕刊 P 16
「頭のよくなる家」という住宅プランがある。有名私立中の合格者を生んだ家には、親子でコミュニケーションがとりやすい間取りなどの工夫があると慶応大学発のベンチャー企業が提唱し、生まれた。注目される背景に何があるのか。 埼玉県熊谷市の住宅展示場に九月にできた木造二階建て「頭のよくなる家」のモデルハウス。東京から家族で見学に来た公務員の男性(37)は語る。「ドアと壁で仕切った子ども部屋だと、大きくなって引きこもるという話を聞く。そうならないよう考えたい」 長男は来春、小学校に入る。将来は中学受験も。今住んでいるマンションの個室を子ども部屋にすることにためらいがある。「頭のよくなる家」は子ども部屋に明確な仕切りがなく、兄弟の机が並ぶ開放的なつくり。興味があると話した。 モデルハウスを設けたのは地元の大野建設(埼玉県行田市)。九月初めの開設以来これまでに来訪者は約五百組、月平均で以前の四―五倍の勢いだ。 当初は「頭のよくなる」という表現に社内でも議論があった。大野年司社長は「点取り虫を育てる家では私も嫌だ。偏差値教育は反対ですから。でも親子の意思疎通をはかり、子どもの感性、人間味を育てる間取りという考え方は共感できるので慶大発のベンチャー企業と組んだ」と語る。 ★ ★ ほかに大手の伊藤忠都市開発(東京・中央)も、さいたま市に建設中のマンションに「頭のよくなる家」タイプを設け、モデルルームを公開している。 住宅業界では以前から、孤立した子ども部屋を見直し、親子の接触を増やす間取りの提案がいくつかあった。「頭のよくなる家」も同じ流れの一つといえる。それでも人々を引き付けたのは大胆な名称だろう。 「頭のいい子」という表現を多用し読者に訴えている雑誌に『プレジデントファミリー』(プレジデント社)がある。「頭のいい子の勉強部屋」などの特集だ。 昨年十一月の創刊号では「頭のいい子の親の顔」と題して、東大生百人の親子を特集した。「そうしたら『頭のいい子』というコピーが流行しましてね」と同誌の鈴木勝彦編集長。 発行部数は約二十万部。中学受験にからむ企画も多い。なぜ、読まれるのか。「やはり親の本音に応えているから」と鈴木さん。今は子どもが一人前に育つかどうか親は不安ばかり抱えている。そこで、とりあえず確実な方策として、勉強ができる頭のいい子にする道を模索する。また中学受験は「親子が共通の目標で濃密な時間を過ごせる数少ない機会。一致団結した家族像へのあこがれも読み取れる」と話す。 ★ ★ だが一方で「頭のよくなる家」への関心に冷めた見方も。『子どもとあそび』の著者で建築家の仙田満さんは「勉強もさることながら、大事なのは子どもがもっと元気に育つ環境を整えること」と強調する。子どもが外で遊ばなくなり肥満や体力低下が問題になって久しい。それが意欲低下に直結していると見る。「本当に勉強するのは高校・大学からでいい。小学生時代は自由に遊ばせ、困難を自力で乗り越える力を身に付けさせるべきだ」 日本大学の広田照幸教授(教育社会学)は現代の多くの家族は、日常の生活が教育中心の雰囲気で築かれており、それが頭のよさばかりに関心が集中する背景だと分析する。親子のコミュニケーションも教育上から必要と考え、気軽な雑談でも、教育的配慮から時事問題などを話題にする。 しかし、こうした「教育する家族」には二重性もある。「意思疎通が密ということは逆に、親の監視がきつく、煩わしいと子どもが思う可能性も。成長に欠かせない家庭外の仲間(同輩集団)との接触が閉ざされることもある」と説く。 「頭のよさ」の追求も、なかなか難しいようだ。 (編集委員 須貝道雄) 住宅プラン「頭のよくなる家」を提唱する慶大発ベンチャーはエコスコーポレーション(横浜市)。難関中学に合格した子どもの家二百例を調べた結果、リビングルームを中心に勉強も生活も営まれ、親子関係が密になる部屋の使い方をしていた。その要素を集約した。 四十万(しじま)靖社長=写真=は「中学受験には社会の偏見があったというのが率直な印象。子どもが鉢巻き締めて、やるぞーなどという雰囲気は合格した家庭になかった。むしろ子どもたちは塾で受験テクニックを勉強し、家では息抜きしている感じ」と振り返る。 共著で『頭のよい子が育つ家』も出した。「まあ、ネーミングで世間に何だろうと思わせようと。居場所の定まらない不安定な社会で、うちの子だけは例外で、安定した生活をと願う父母が多くなっている。そうした親に居場所を与えるのが“頭のよくなる家”だと思っている」