20080404青眉抄_上村松園
女性で初めて文化勲章を授章した女流画家の随筆です。私は上村松園の画がとても好きで、名古屋に住んでいたころは奈良や京都に行って画を観にいって感動したりしていました。
宮尾登美子の序の舞のモデルとなった人です。
上村松園の画の前に立つと、放つ気品に圧倒されてしまいます。こんなすごい絵をどうやって描くんだろうと思ったりしました。この本を読んで、いくつかの謎が解けたような気がします。とことん徹底してモデルを下絵し、対象となる人物のことをとことん調べており、作品の揺るぎない堂々とした存在感はそうしたところから生まれてくるのでしょう。健康じゃないといい絵は描けないというのは私も同感です。仕事柄絵を描いたりしますが、元気じゃないといい絵は描けません。
松園のサインは園の字の外側の四角が上のほうしか書かれていませんが、その謎もここで明らかにされています。松園ファンなら必読の書だと思います。
以下抜書き。
・古人は目を心の窓と言ったと同時に眉を感情の警報機にたとえて・・・・・
・むかしは女性の眉をみただけで、あれはどのような素性の女性であるかということが判った。
・自分の力の及ぶ限り、これ以上は自分の力ではどうにもならないという処まで工夫し、押しつめて行ってこそ、はじめて、大いなる神仏のお力がそこに降ろされるのであります。
・なせば成るなさねが成らぬ何事も、なさぬは人のなさぬなりけり
・天の啓示を受けるということは、機会を掴むということであります。天の啓示は機会ということであります。機会ほど、うっかりしていると逃げてしまうものはありません。機会を掴むのにも、不断の努力と精進が必要なのであります。
・縮図した絵の原図は、その縮図をひらいて見さえすればすぐに憶い出せる、頭の中にはっきりと描写し得る。これは苦労しているからである。
・一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところである。