2008/04/05

20080404 青眉抄 上村松園



20080404青眉抄_上村松園
女性で初めて文化勲章を授章した女流画家の随筆です。私は上村松園の画がとても好きで、名古屋に住んでいたころは奈良や京都に行って画を観にいって感動したりしていました。
宮尾登美子の序の舞のモデルとなった人です。
上村松園の画の前に立つと、放つ気品に圧倒されてしまいます。こんなすごい絵をどうやって描くんだろうと思ったりしました。この本を読んで、いくつかの謎が解けたような気がします。とことん徹底してモデルを下絵し、対象となる人物のことをとことん調べており、作品の揺るぎない堂々とした存在感はそうしたところから生まれてくるのでしょう。健康じゃないといい絵は描けないというのは私も同感です。仕事柄絵を描いたりしますが、元気じゃないといい絵は描けません。
松園のサインは園の字の外側の四角が上のほうしか書かれていませんが、その謎もここで明らかにされています。松園ファンなら必読の書だと思います。
 
以下抜書き。
 
・古人は目を心の窓と言ったと同時に眉を感情の警報機にたとえて・・・・・
・むかしは女性の眉をみただけで、あれはどのような素性の女性であるかということが判った。
・自分の力の及ぶ限り、これ以上は自分の力ではどうにもならないという処まで工夫し、押しつめて行ってこそ、はじめて、大いなる神仏のお力がそこに降ろされるのであります。
・なせば成るなさねが成らぬ何事も、なさぬは人のなさぬなりけり
・天の啓示を受けるということは、機会を掴むということであります。天の啓示は機会ということであります。機会ほど、うっかりしていると逃げてしまうものはありません。機会を掴むのにも、不断の努力と精進が必要なのであります。
・縮図した絵の原図は、その縮図をひらいて見さえすればすぐに憶い出せる、頭の中にはっきりと描写し得る。これは苦労しているからである。
・一点の卑俗なところもなく、清澄な感じのする香高い珠玉のような絵こそ私の念願とするところである。

2008/04/04

20080402さおだけ屋はなぜ潰れないのか?身近な疑問から始める会計学 山田 真哉


さおだけ屋はなぜ潰れないのか?身近な疑問から始める会計学 山田 真哉

いくつかのパートに分かれていて、読みやすい構成になっていました。さおだけ屋以外にも、人気の無いレストランはなぜ潰れないのか、など面白
い内容が各パートに収まっています。私には在庫イコール悪、という会計上の位置づけを初めて知って、これはと合点が行きました。箪笥の中の不
要物を一挙に片付けることができそうです。

会計を学んで5年くらいと著者は語っていますが、判りやすく難しいことを伝えるのはその道のプロならではのことかと思います。かなり若くして
その道の達人となったように感じます。私がお世話になることはないと思いますが、いろいろと会社人をしていく上で有用な知識を習得できまし
た。l

2008/04/01

20080330 無思想の発見 養老孟司

この本も面白かった。会社に入ったその日から覚えた違和感、その他もろもろの事象の根元が、海が2つに割れるようにして、見えた。

難しい部分もある。それは未だ自分に必要ないのだ、と勝手に解釈してずんずん読んだ。

このくらい判りやすく日本人の現代意識を浮かび上がらせた人も居ないのではないか。丸山真男の本は難しくて読む気すら起きないが、養老孟司の本は読める。判る。自分の思考回路に取り込むことができる。取り込んで自分のものとして生育できる。面白い本だ。

20080329 死の壁 養老孟司

面白かった。目から鱗が何枚も落ちた。タナトスなんていうのはよく判らない自分だけど、自分の死体が無い、ということは良く理解できた。死は
悩む必要なんて無いと自分で考えることができるようになれた。この本は、言っている事が判った、ではなく、自分もそう考えることができる、と
いう立場に立てるかどうか、だろう。人から与えられた物ではなく、自分で決められること。自由であり、同時に自由ではないのである。

20080326 高層マンション子育ての危険 織田 正昭

マンション住まいの身としては、非常に気になるタイトルである。本日返却された図書、の棚から手にとった。家に帰って早速読んでみると、これ
がまた、実に中身の薄い本であった。それどころか、本というには、お寒い内容だ。本当は2〜3ページで済みそうなものを無理矢理一冊の本に仕
立て上げているような感じがする。
高層階で生活することで、どういう実態的な害があるのか、この本で得られるかも、と思うのは見込み違いである。とんがったタイトルをつけてい
るが、これはやり過ぎだろう。いち研究者が自分の為に書いた活動経歴、のような類だ。

20080329 都市主義の限界 養老孟司

都市が仕事相手の身の上なので、タイトルにまず惹かれた。作者によれば、都市とは意識化、だそうだ。もっとも至極である。こういうものは、簡
単な物言いのようで実は簡単ではない。そう言われてみればハタと気づくことである。言われないと判らない。
アメリカ合衆国は国を道路で平面展開したが、日本は床を積層させて展開を図った。こうして東洋の島国に世界で一番大きく、同時に整然としない
都市「東京」が出来上がったわけである。
都市は高層化する、というのが当方の仕事の世界では命題のひとつなので、こういうものの見方はまことにありがたい。

20080321 塀の中の懲りない面々 阿部譲二

全米で大ヒットしたプリズン・ブレイクを見たこともあって、楽しく読ませてもらった一冊。
日本は刑務所の中もやっぱり日本だなあと思いました。一番面白かったのが1000円の腹巻の話し。よくこういう筋書きを描くことができるものだと
感心しました。なにより作者の阿部譲二氏の経歴にびっくり。40代で作家デビューとは知りませんでした。

20080324 毒にも薬にもなる話 養老孟司

中央公論に掲載したものを中心として、日本の現代の時評を述べている。
中央公論に掲載したものはその時点でニュースとなっている事に触れており、そのネタの背景を知らないと余り面白くない。
ということで私にはそれ以外のものが面白かった。後半の部分である。かなり辛口で刺激を受けた。文庫になったら欲しい一冊である。