2008/05/05

20080505晴れないうつはないのです 高田明和



20080505晴れないうつはないのです 高田明和
うつ病について、現在判っている最新の原因分析を記し、それを踏まえて効果的な治療方法を紹介している。治療方法は薬物療法・認知療法の両面からの説明となっている。多少、専門的な用語が多く難解な点も多いがしっかりとうつ病について理解し、治療法を知りたい人にはとても良い本だと思う。
薬物療法だけでなく、認知療法についても丁寧に説明されている。著者自身がうつ病の経験者でもあることから、自分の実体験をなぞるようにして紹介しており、説得力を感じさせる文章である。私は認知療法については森田療法の触りぐらいしか知らなかったので興味深く読ませてもらった。後半部分はこの認知療法の話なのだが、宗教色が濃くなってきており諭すような文章が多いのが残念だ。
ただ、言葉の定義・格言・ことわざなど示唆に富む文章も多く、いくつか引用しておきたい。
最終部分にうつ病の治療生活での食事等にまで具体的に踏み込んで、解説しており大変役に立つ本である。また、食べ物についての留意点をここまで親切に記述しているのは、今までこの本以外お目にかかったことが無い。知っておいて損の無い文章が多い。手元に置いて損の無い一冊。

CRH:副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(corticotropin-releasing hormone)視床下部から分泌されるペプチドホルモンの一つ。

うつ病には視床下部、扁桃、海馬、前頭葉の働きに関係している。
うつ病になると右脳の前頭前野の活動が高まる。左脳だと楽天的になる。
海馬の細胞が増えないと、うつ病は治らない。

プラシボ効果:「効き目がある」と信じることにより、病気に対して精神的な治癒力を発する効果。

西洋式認知療法~三列記録法
①自動的な考えの認知:自己批判の思いが心をよぎったら、それに注意を向け、ノートなどに書き出す。
②ゆがめられた考えの認知:その考えがゆがんでいることを認識理解する。
③①への具体的な反論:もっと現実的で肯定的な自己評価を具体的に書きとめる。

怖れるものは、みなくる。
馬には乗ってみよ。人には添うてみよ。
因と縁
念を継がない
苦しいことは、早く飛び込めば、早く抜け出せる
考えずに一歩足を踏み出せ
言葉の力を借りる、言霊
言葉は私たちの潜在意識に送られる
よいことを思えばよいことが来る、悪いことを思えば悪いことがくる。
言葉の力によって、心を正しい状態にし、脳の回路を作り直すことができる。
言葉によって心が癒されると、海馬の細胞が増える。
ミラー細胞
自分を励ます言葉
困ったことは起こらない
すべてはよくなる、すべてはよくなる。
過去は思わず
ふりむくな、ふりむくな、うしろには夢がない
考えない、という仏教の修行

明るい光を浴びて松果体に刺激を与えセロトニンを多くする
身体を動かせば、脳全体の活動を刺激する
海馬の細胞を増やすには、運動、刺激、頭を正しく使う。
姿勢を正せば、悩みから逃れられる
呼吸をゆっくりすれば、心が落ち着く、セロトニンが増える
数息観 一から十まで ひとー つ、

食肉や脂肪の摂取を減らすと、うつになりやすい
砂糖は、ドーパミンとβエンドルフィンを出させて、快感を与え、意欲を起こさせる

20080503「パニック障害」メディカル・ガイド 越野好文 志野靖史



20080503「パニック障害」メディカル・ガイド 越野好文(作) 志野靖史(作・画)
パニック障害についての最新の基本的知識が漫画やイラストで判りやすく描かれている良本。
これを読めばパニック障害の大体のことが判る。9年前にはこうした本は全く無かった。
治療薬としてSSRIが第一に続く選択薬になっていることが時代の流れを反映している。
第一選択薬に抗不安薬が出てきているが、これで良くなる人はかなり軽い症状の人だろう。実際には抗うつ薬かSSRIを初期から投与しないと良くならない人のほうが多いのではないかと思う。薬が作用するには時間がかかるのでそのことを強調してあるのは、作者が良識人であることを示していると思う。
パニック障害の発作や予期不安以外の不定愁訴、残留症状、苦しい身体症状などへの対処法についての言及が無いのが残念である。続編としてパニック障害から抜け出すための対処法を組んでくれたらこの種の障害についての本としてトップに位置づけられるのではないかと思う。

20080501赤と黒 スタンダール 野崎歓 訳



20080501赤と黒 スタンダール上下巻 野崎歓 訳
19世紀のフランスを舞台にした若者の情熱を描いた小説。
上巻では単なる禁じられた恋愛小説の類のものと思ったが、下巻で話がパリに飛んで一挙に流動する。
マチルダが落城するまでのやり取りは面白かった。
この時代、こうした恋愛テクニックの類が上流階級では試みられていたのだろうか。
激動の展開になる終末の発端となった、レナール婦人の手紙だがかなり作者の作為が出過ぎているように感じる。かなり強引な展開だ。この明らかな作為の介入で小説全体のまとまり自体にも悪影響を及ぼしている。この時代の若者たちの自由な精神の流動をよく表現しているが、恋愛を主とした小説展開としては上出来とは言えないものだろう。
ともあれ、有名な小説であり読んでとても面白いのは事実である。
19世紀の時代を色濃く映し出している。